テキストサイズ

my destiny

第10章 僕が僕の全て

【智side】

新しいアルバムのレコーディングと併せて、リード曲、ユニット曲、翔君のドラマ主題歌、カップリング曲と。

振り写し、PVの撮影や諸々、関連した取材だったり、CMの撮影もあったりして、グループ単位の現場が徐々に増えて来た。

もうすぐライブに向けて動き始めることになるだろう。
体力をつけておかないといけない。

今日は5人で、アルバムのジャケ写を撮りに海に来てる。

オイラ、海は大好きだし、潮の匂いを感じるだけでも嬉しいからいいんだけど。

「さむ」

どうしても口から出ちゃう。
この季節、シャツに薄手の上着一枚だと、もう海風で冷える。

「晴れて良かったね」

そう言う翔君も、こわばった顔をしてるから寒いんだろう。

待ちの間は5人それぞれがベンチコートを着て、寒さを紛らわすために足踏みをしていた。

待機場所を作ってもらえたから、そこに居ればいいんだけど。
波打ち際を見ていたくて、オイラは震えながら風に吹かれてる。

翔君まで付き合わなくてもいいのに。

「オイラ、最近はもう雨男じゃないよ?」

「風男なんでしょ?
あの大きい雲が動くといいんだけどね?」

「……寒いねぇ」

聞こえないふりをしてスルーしたら、翔君が笑った気配がした。

オイラの後ろに移動して、背中から包むように腕を前に回してくる。
そのまま体の向きを変えられた。

ああ、風上に立って、オイラに直接、風が当たらないようにしてくれたんだ。

スタッフを気にしたのか、スッと腕が離れる。

「ありがと」

「どういたしまして」

振り返ると、いつもの高さに翔君の顔がある。
視線が合うと、アーモンドの形をした目が細くなった。

へへっ。

嬉しい。

けど、恥ずかしいから、オイラはまた前を向く。

仕事だけど、平日の昼間に海に来るような人はほとんどいないし。
普段は一緒に外を歩く事なんて滅多にないから。

こんな風に皆から離れて、二人で砂浜にいると、何だかデートしてるみたい。

こそばゆい。





ストーリーメニュー

TOPTOPへ