テキストサイズ

my destiny

第11章 宮城へ

【翔side】

智君は2日間で振付を仕上げたようで、無理をしたのか3日目の朝方近くにヨロヨロと帰宅した。

このまま寝ないで6時台の新幹線に乗りたい、と言う。
そうすれば、こっちに戻ってからもう一度、スタジオに行けるから、って。

出来上がったモノから一旦離れて、時間を置いてまた見直すのは当たり前の作業ではあるけれど。

根を詰める質の人だから、心配になる。

それでも仕事においては俺達はお互いの領域には口出ししない。
せめて新幹線の中で少しでも眠ってくれれば、と思いながら、黙って同行した。



仙台は遠いイメージだけど、実際には東京から新幹線に乗って1時間半で到着してしまう中途半端な距離でもある。

眠ったとしてもせいぜい一時間位だから、休息をとるにはちょっと足りない。

体は疲れている筈なのに頭が冴えた状態になってしまっているらしい智君は、強行軍の割に何だか機嫌が良くて。
むしろいつもよりもハイに見えた。

「並んで新幹線に乗るの、久しぶりだね」

嬉しそうに窓側に座って、スマホの充電器をコンセントに差し込んだ。

時間が時間だからか車内は空いていて。
グリーン車に空きがあって助かった。

俺たちは膝を覆ったコートの下で、こっそり手を繋いでる。

智君は、器用に左手だけでスマホの画面をスクロールしながら、ネットを見始めた。

繋いだ手の温かさに、眠いんじゃないのかな、と思いながら、俺も外の景色を見やる。

東へ向かう車窓は段々に平地が広くなって、やがて大きな川を渡る。
曇天ではあったけど、流れて行く朝の街並みを高い位置から眺めるのも面白かった。

通勤の車が走る国道は、日本中どこにでもあるチェーン店が並んでいて。
特別に珍しいものでもないんだけど。
皆、同じように一生懸命、毎日を生きてるんだな、と思う。

誰かの為だったり、自分の為だったり、時に惰性になったりしながら。
給料日を楽しみにして支払いをやりくりし、食事をして眠るのは、きっと皆同じで。

生まれてきて良かったと思ったり、人生が辛いと思ったり。
ちょっと嬉しかったり、悲しかったり。
傷ついて打ちのめされることがあっても。
最後には大切な存在が幸せであるように祈ってる。

東北の復興はどの程度進んだのだろう。
俺達が行った時に精一杯もてなしてくれた人達は、笑顔で暮らしているのだろうか。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ