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my destiny

第12章 陸奥一之宮

【智side】

手前で手水を使って、一礼して鳥居をくぐる。
遠くから雅楽の音が聞こえて来た。

「なんでも東北で一番有名な狛犬がいるらしいよ」

「え、なんで?」

「ちょっと他にない感じの風貌なんだって」

なんだか、さっきから翔君、ずっと優しい顔してる。
いつも優しいけど。

目が合う度に笑ってくれて。
プライベートって感じがする。

ふふっ。
嬉しい。

楽しくなってきた。



それから二人で、東北で一番有名な狛犬と写真を撮って。

立派なご神木があったから、思わず手を合わせたりして。

鹽竈神社の神様に、ボンちゃんの奥さんの安産をお願いした。

交通事故で死んでしまったあの子が生まれ変わってくるのかもしれないし。
わかんないけど、もし違ってたって、新しい命が生まれてくるんだ。

神様、もしも、オイラがもらってる幸運みたいなものがあるなら。
それを、生まれてくる子にあげてください。

自分が辛いからって、オイラ、もう生きていたくないなんて思ったりして。
ごめんなさい。

皆に大事にされてたのに、頼ること、出来なくて。

神様、どうか。

オイラが大好きな人達が、笑っていてくれますように。

もらったあったかい気持ちに、お返しが出来ますように。



翔君は何をお願いしたのかな…。

二人で結構長く手を合わせてたんだけど、オイラが最後の一礼をして頭を上げてみると、翔君はまだ何か熱心に祈ってた。

キレイな顔だなぁ…。

後ろには並んでる人も居なかったから、翔君が参拝を終えるまで、そーっと静かにして横顔を見てた。

翔君の願いも、叶うといいね。

きっと、夢が少しでも長く続くように祈ってるのかな、と思った。






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