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sweet poison【BL】

第1章 茜陽一の仕事

スーツを脱ぎ、私服に着替える。

「スーツってどうしてこう動きにくいんだろうな?」

五年も着ているが、未だに慣れていなかった。

高校を卒業してから大学へは行かず、この土地に家族三人で越してきた。

本当は行く大学は決まっていた。

準備もしていたが…。

「羽月…」

机に置いた写真たてを手に取り、陽一は深く息を吐いた。

写真に写っているのは二人の男子高校生だ。

一人は陽介。

人懐こい笑みを浮かべている。

そしてもう一人は茶色の髪と眼を持ち、ふんわりと笑う―羽月だった。

二人とも真新しいブレザーの制服を着て、満開の桜の樹を背景に笑っている。

高校の入学式に撮った写真だった。

二人で撮った写真はまだたくさんある。

けれど陽一はこの写真が一番気に入っていた。

「…この頃が、一番楽しかったのかもな」

ぽつりと呟き、写真たてを持ちながらベッドに腰を下ろした。

この頃はまだ、二人は幸せだった。

何にも考えず、二人で一緒にいることが普通で当たり前、そして楽しいことだった。

それが崩れたのは…いつのことだったか。

「少なくとも、この頃はまだ大丈夫だったよな」

苦笑を浮かべ、眼を閉じる。

―そう。

少なくともこの頃はまだ、あの冬の日の出来事が起こるなんて、お互いに予想もしていなかったはずだった。

しかしそのことを、羽月に聞く術を陽介は持っていなかった。

…いや、持っていたとしても、使わなかっただろう。

『愛しているよ。陽一』

「…ウソツキ」

陽一は幻の中の羽月に囁いた。

「オレを…殺したくせに」

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