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兄弟ですが、血の繋がりはありません!

第4章 夏の暑い日は溶けていればよし


智希side

夏の暑さが苦手だ。

青い海も、近く感じる空も、蝉の声も。夏を構成するそれは好きなんだけどね。どうしても、暑さには弱くて。

毎年食欲もやる気もありとあらゆるステータスというか、ポテンシャルというかが下がるんだ。

「うっわ美味しそう!ねぇねぇハルルっこれなに?!」

確かに美味しそうな悠の料理。

それすらも、

「(食べたい、とはならないんだよなぁ…)」

「おにぎりは右から、梅ササミ・枝豆チーズ昆布・鮭コーン。スープは鯖の冷や汁。どう、かな。食べられそう?」

「うん!超美味そう!」

「鶫くんに聞いてない。智にぃ、食べて?」

だけど俺は昔っからこの顔に弱くて。
何でもはいはいって聞いてしまうし、やってあげたくなってしまうのだ。

「うん、折角だし食べようかな。いただきます」

「おーれもっ!いただきます!」

「いただきます」

鮭コーンのおにぎりをひと口。
いつものおにぎりより小さくて食べやすくなっていた。

「、美味い…」

鮭の塩味とコーンの甘さが優しくて、好きな味だ…。おにぎりは二口で胃に消えてしまった。

次は冷や汁。ベースはいつもの味噌汁だけど少し出汁が多めで、具は鯖缶ときゅうり。

「(ごく、ん)あ、これも美味しい」

食欲がないなんて、嘘みたい。どれも美味しくて簡単に飲み込めてしまう。

チラリと横を見れば、鶫が既に自分の分のおにぎりを平らげていた。

「悠っ美味しいよ!これ食べたら夏バテなんて吹っ飛んじゃいそうだね」

「良かった、品数少ないからちょっと心配だったんだ。智にぃは?どれが美味しい?」

真っ直ぐに4つの目が俺を見る。
2人とも箸も止まっちゃって。そんなに俺の食事事情がきになります?

「全部。悠のご飯は全部美味しいよ」

嘘などなく。

「ちょっとまたそれ?・・・まぁ食べられそうならもう、いいや。冷や汁はおかわりあるから、」

「オレおかわりしよ〜」

「急に固形物食べてるんだから、お腹壊さないでよ?消化不良とかさ、あるんだから」

この光景は俺が大好きな夏だ。

だけどこれも、暑さのせいで夏バテしたから見れている、と言っても過言ではないしね。

少しだけ好きになってやろうかな。

「あ、鶫。俺もおかわり〜」

「鶫くんー俺も〜」

「えっそんなにないけど?!」

「ジャンケン」

溶ける夏もまた良し。

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