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天気師の少年

第1章 ホームレス始めます

だから、知っている人が誰もいない都会に逃げてその片隅でホームレスにでもなろうと決心したのだった。

都会は他人になど興味がないから、誰にも気にされることなく、また、自分も誰かを気にすることもなく、そんな孤独が風海には安心できる空気だと思った。

もう仮面家族な父や母の姿に苦しむこともないし、経験済のヤツらを見て惨めな気持ちになることもなく気ままに生きていけるんだ。

「風海」

風海が電車の駅に向かうと美人な女子が声をかけてきた。サセ子だと風海は目を背けて視線を合わせないようにする。
彼女は砂世子(さよこ)というのだが、カネを取って男に体を売るという黒い噂があってサセ子と言われている。

童貞を卒業したという男子の中にもサセ子にカネを渡してヤラせてもらって何とか経験済みになったヤツが何人かいる。

風海もサセ子にお願いしてみようと思ったこともあるが、ヤラせてもらったという男子の顔が思い浮かんで、そいつらと同じ穴の狢になるのは汚ならしくてキモチ悪いのでやめた。
そもそもいろんな男とそんなことをするサセ子だってキモチ悪いし汚いと思うから関わり合いたくもないのが本音のところだった。

「シカトこいてんじゃないよ。あんた、まだ童貞なの?」とサセ子はからかうように言ってきた。

「童貞じゃね~よ」

気にしていること、今回この街を出ていくことを決心した割りと大きな要因であることを言われて風海はついムキになって言ってしまった。
それに、妄想の中ではクラスの女子とはサセ子を除いて全員、他のクラスや学年の違う女子も数人とはヤッている・・。

「無理すんなって。高校卒業したってのに童貞なんてシケたことじゃ大学も受からないよ」と言ってサセ子は指を3本立ててみせた。

3万円でどう?ってことだ。
風海は思いきり頭をブンブンと振ってイヤだと断った。

「じゃあさ、女の裸って見たことある?裸になるだけなら1本でいいよ」とサセ子は言った。

1万円ということだ。

きっぱりと「断る」と言ってやったつもりだが、風海を見てサセ子はケラケラと笑った。

何を笑ってやがると思ったが、理由に気づいた風海は大慌てで前屈みになって股間を隠した。

いろんな男とシテいるから汚くてオカズに使ったこともなかったが、サセ子はいい女だし、いい体をしている。

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