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あなたが私の最高な人

第2章 Act.2-01

「あ、あの……」

 私は両手でバッグを抱き締めたまま、強く目を閉じる。
 このまま襲われる。そう思っていたのだけど――

「気分はどう?」

 思いのほか穏やかに訊かれた。
 しかもこの声、聞き覚えがある。

 怖い。
 けれど、もしかしたら、という淡い期待もあり、私は恐る恐る顔を上げた。

「さっきよりは顔色がいいな」

 私と目が合うなり、その人はニッコリと笑いかけてきた。
 先ほどの夢の中と同じように。

「な、なんで……?」

 訊きたいことは山ほどある。
 なのに、やっと出たのはこれだけだった。

「そんなに俺にビックリしてる?」

 彼の問いに、私は何度も頷く。驚かないはずがない。
 まさか、別れたはずの彼が私の前に再び現れるなんて。

 もう、逃げようなどという気はなくなった。
 私を介抱してくれたのが彼だと分かり、すっかり安心してしまった。
 とはいえ、やっぱり別れた相手には変わりないのだけど。

「せっかくだ。少しだけ、俺の相手をしてくれないか?」

 彼の誘いも、私は断ることが出来なかった。

 私と彼は並んでソファーに座った。
 ふたりきりになるなんて、どれぐらいぶりだろう。

「男達と混ざって盛り上がってたみたいだな」

 座るなり、彼が言う。

「悪い?」

 憮然としながら返すと、彼は苦笑いしながら肩を竦めた。

「悪いことはない。俺達は別れたんだ。君が何をしようと、今の俺に責める権利はないからな」

 彼の言葉に、胸の奧がチクリと痛む。
 改めて、彼から『別れた』と言われると、やっぱりちょっとショックだった。
 同時に、まだ彼に未練があったのだと思い知らされる。

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