
その瞳にうつりたくて…
第5章 思い出
―――ゴロゴロ、ゴロゴロ…。
窓の外で鳴り響いていた雷鳴も収まり出して来た。
相変わらず雨は激しく降り続いているが、さっきまで鳴り響いていた雷鳴は小さくなって来ていた。
「大丈夫?落ち着いた?」
「はい。何とか…」
彼女はピアノの椅子に、俺は近くのパイプ椅子を借りてその場に座った。
彼女の様子からしてだいぶ落ち着いては来てるようだ。
「っていうか、この雨の中よくここまで来れたね」
「朝、家を出たときはそんなに降ってませんでしたし、ここまでの道は何と無く覚えてますから」
「家はここから近いの?」
「徒歩で15分ぐらいです」
激しく雨が降り続ける音楽室で、俺は彼女といろんな話をした。
お友達と言われたからには談笑ぐらいしてもいいだろうと思ったから。
「今日はピアノ弾いてなかったの?」
「朝は弾いてましたけど、今は休憩中。あんまり無理をしたらリハビリになりませんから」
彼女の家はここからとほで15分。
ピアノでリハビリをしてるがちゃんと休憩も挟んでる。
今日はここに来たお陰で彼女の新しい情報が得られた。
「俺、綾ちゃんが弾くピアノ、すげぇ好き」
「本当ですか?」
「あぁ。ピアノ上手いね」
「小さい頃から習わされてて、もう15年になります」
って事は9歳ぐらいから習ってんのか。
そりゃあれだけ上手くもなるな。
