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その瞳にうつりたくて…

第5章 思い出

その後、生徒達は午前の授業の続きでパントマイムの練習を始めた。

俺は壁にもたれて生徒達の演技や動きを見ながら彼女の事を考えていた。

ん~、このままじゃやべぇな…。
彼女と友達ってだけでもヤバイのに、これからずっと休憩時間の度に会いに行くのは非常に危険だ。
俺の正体がバレるとかの前に俺と彼女の関係は指導員と生徒。
あんな誰も来ないような音楽室でコソコソと生徒会ってるなんて事が誰かにバレたら…。

最悪な未来を考えると鳥肌が立った。
バレたら即クビだ。

何をどう考えても彼女に会い続けるのはヤバい。
でも、彼女と約束してしまったしな。


「ねぇ、今日のカトセン、いつにも増してヤバくない?」
「うん。考え込んでるよね?女関係とかで悩んでるんじゃない?」
「は?キッモ…。笑えないんだけど」

…いやだから、聞こえてるっての。
まぁ、女関係で悩んでるのは本当だ。
内容的にはロマンティックな内容でもないんだけどな。
はぁ…、生徒への対応よりも難しい悩みだな、これは。
溜め息を付きながら頭をかいた。
生徒達の演技の方は…、概ね問題はない仕上がりだ。
俺が教えることは何もなさそうだ。
これぐらいの基礎知識、俺がいなくても生徒達はもうわかってる。


―――――「でも、今日のカトセン…、ちょっとかっこよくない?」





彼女がこんな俺の姿を知ったら…、100年の恋も冷めるかもな。

俺はまだ、彼女の初恋という凶器の鋭さに気づいていなかった。









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