
その瞳にうつりたくて…
第7章 悪戯
ゴロゴロ…。
次の日の朝、その日は朝から怪しい空模様だった。
遠くで雷が鳴ってる。
天気予報では昼前ぐらいから雷を伴った雨が降るって言ってたな。
俺は空を見上げながら彼女の事を思っていた。
雷が鳴ったらまた彼女は怖がるんだろう。
子供みたいに体を小さく丸めて、体を震わせながら怯えるんだ。
それを考えると、今日はいち早く音楽室に行ってあげようと思ってしまう。
「よーし、じゃあ、今日のレッスンは…」
「は、はいっ!」
「………。」
昨日、生徒達に言い返したのが効いたのか今日の生徒達はやけに素直だ。
素直にレッスンを受けてくれるのはいいんだが、調子狂うなぁ。
まぁ、いいけど。
その日も俳優の基礎となる発声練習と滑舌の練習をして
いつも通り即興のアドリブだけの演技を見せてもらう。
どの子も個性があって得て不得手があって見ていて面白い。
俺が勉強になってる部分も大きい。
レッスン室に入れば外部の音は何も聞こえない。
今、外がどんな天気になってるのかもわからない。
雨は降ってるのか?雷は鳴ってるのか?
もし雷が鳴ってたら、彼女は怖がってやしないだろうか。
あの静かな音楽室で、一人で…。
そう思うと、早く彼女のそばに行ってあげたかった。
雷に怯える彼女に「大丈夫だよ」と声をかけてあげたかった。
さすがに抱き締める訳にはいかねぇしな。
