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ダブル不倫

第12章 夢

 奈々葉は処置室の前の長椅子に腰掛けていた。白衣の女性が顔を覗ける。

「あ、あの部長……いや、里井航《わたる》の……あ、さっき運ばれた……救急車で……」

「……奥さま……ですか?」

「あ、いえ、……まあ……それで……?」

「……過労ですね……」

 白衣の女性は自分のマスクを外しながら言った。ぽてっと厚ぼったい彼女の下唇が動く。

「……過労……?」

「……数日眠ってないそうですので、今はお薬で……」

「……わ、分かりました」

「恐らく精神的にも疲れていらっしゃいますので、奥さまが支えて上げて下さいね」

「……はい……ありがとうございます」

 白衣の女性は白い歯を見せて、処置室に戻った。

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