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ダブル不倫

第15章 不思議な女性

「ごちそうさま……。そう言えば珍しいね。お客さんなんて……」

 高木がフレームの小さな眼鏡越しに上目遣いで奈々葉に目をやる。

「可愛らしいでしょ……お店が明るくなるわ……いつもは、病院を引退した……ねぇ?」と行ったあと、何かを思い出したかのように詠美は「あ、そうそう、高木くん」と自分の手を軽く叩いて言った。

「……少しお願いがあるの……このお姉ちゃん、足の裏を切っちゃって……一応応急処置はしたんだけど……」




 高木は眼鏡を額に上げて奈々葉の足裏を覗き込む。

「うん……恐らく足の傷は大丈夫そうだ。けど……」

「……けど……?」

「……いやいや……独り言……」と言いながら、高木の手のひらが自分の胸を撫でる。

「あなた、困ったことがあったら、このおばあさんに相談しなさいね……」

 ――高木さんに、読まれてる? 私の心の中……。

 奈々葉は小さく頷いた。

「何よ。レディにおばあさん、だなんて。ねぇ?」

 と、詠美が口を尖らせて、笑みこぼした……。

 高木の大きな瞳が悲しそうに奈々葉に目をやる。

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