テキストサイズ

ダブル不倫

第16章 夢の中から

 ――えっ?
 
 風が、ゴーと音を立て奈々葉の髪をなびかせる。圧縮された空気がバンと音を立てたあと、パーンと電子音の警笛を鳴らす特急列車が光の線を描きながら通り過ぎる。
 
「えっ、私……」
 
 奈々葉は自分の足元を見た。
 
「俺たちの会社の屋上だ」
 
 ――私、いつの間に……。
 
 里井の声だ。
 
 強く腕を引かれる。
 
 足元に目をやる。
 
 鉄柵を超えていることに気づいた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ