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堅実メイドの献身

第4章 辞退

空が白んできた頃、気づくとぼんやりと天井を見上げていた。

ー 天井ってこんなに高かったんだ。今まで気づかなかったな。

少し視線を逸らすと、天窓があり、さらにその先に大きな窓が2、3連なっている。

ー 天窓もあったんだ。ちょうど日の出くらいかな。

ー あれ、私の部屋は1階、、、

はっと気づいて、跳ね起きる。

ー ここはっ、

「どこ行くの?」

すぐ隣から声がして、ぐいっと強い力で引き戻される。
ぽすっとベッドに倒れ込むと、暎人が眠そうな顔でこちらを見ている。

「暎人様。ここは暎人様のお部屋ですね?」

「そうだよ。」

「あの、私昨日あの後、その、、」

「ちゃんと覚えててくれたんだ。あの後、雅、気を失っちゃったからシャワーだけ浴びて着替えてさせちゃった。」

確かに、今はメイド服ではなくバスローブを着ている。

「ひゃっ。」

「あれ、媚薬なくても耳弱いんだ。」

暎人はおもむろに、雅の顔にかかった髪を耳にかけた。

「ち、違います。びっくりしただけです。」

「ふーん。」

そのまま親指の腹で雅の耳の形を確認するように撫でる。

「ん。」

声が漏れぬよう、我慢する。
暎人を見ると片肘をついて、こちらをじっと見ている。
雅の反応を楽しんでいるようだ。

何度も撫で擦られたのちに、ようやく解放された。

「雅の反応が可愛くて、止まらなくなっちゃった。」

そう言って暎人にぎゅっと抱き寄せられる。

「今夜も来るんだ。わかったね。」

「・・・承知しました。」

了承しないと、離してくれなさそうだったので、ひとまず返事をした。

その後、いったん自分の部屋に戻り風呂に入ると、ちょうどいつもの起床時間くらいだった。

ーこのまま準備して行くしかないか。

正直昨日の疲労が残っているのか、身体が重い。今夜も呼び出されているが、なんとか断る方法はないだろうか。

準備が整うと、食堂に向かう。

使用人の朝は早い。
旦那様方が起きる前に自分たちの朝食を済ませて、その日の仕事に取り掛からねばならない。

食堂に行くと、コックの柴田が一人で調理中だった。

「おぅ、おはようさん。」

雅に気づくと挨拶してきた。

「おはようございます。手伝いますね。」

「いつも悪いね。担当でもないのに、」

「いえ、じっとしてるのが無理なタチなので。」




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