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堅実メイドの献身

第3章 0時のティータイム

暎人:(ちょっと僕の部屋にきてくれないか?)

スマホのロック画面に着信が入る。

ーこんな時間に?

顔合わせした日の夜のことだった。
正式には明日からお付きメイドなる筈だが、連絡がきたからにはそうも言ってられない。

雅:(かしこまりました)

返事をすると、メイド服に着替える。

時間を確認すると、23:30過ぎだった。
こんな時間に呼び出しとは何かあったのだろうか?
黒く長い髪は軽くまとめてだらしなく見えないように整える。

ー夜中の呼び出しとはいえ、最初はきちんとした方がいいよな。

鏡で身だしなみを確認し、非礼にならない程度に化粧した。

部屋を出る時、時間を見ると23:52だった。
あまり待たせてはまずい。
早足で暎人の部屋に向かう。

ーーーー

コンコン

ノックするが返事がない。
少し迷ったが、ドアを開けて中に入る。

「お待たせ致しました。」

部屋の明かりは全部消えていた。
しかし月明かりだけで周りが見えるほどには十分明るい。
暎人の部屋の作りもあるのだろう。
雅の部屋より広く、窓も大きい。さらに、最上階なので、天窓から入る光もある。

「こんな時間に呼び出してすまない。」

暎人は立ったまま丸テーブルで何かの作業中のようだ。よく見えない。


「いえ。」

一言だけ返して、暎人の方に歩いてく。
少し近づくと、暎人の手元が見えてきた。

「お茶、、ですか?」

いつもは使用人が用意するのだが、暎人自らティーセットや茶葉を用意したのだろうか?

「そうだよ、僕が自分で淹れようと思ってね。さぁ、そこに掛けて。」

「お茶のご用意なら、私が致しますよ。」

「いいんだ。紅茶が好きでね。たまに自分で淹れたりするんだよ。遠慮せず、座ってくれ。」

そこまで言われたら無理にこちらが手配するのも可笑しいかなと思い、おずおずと側の椅子に掛ける。
ただ、とても落ち着かない。雅がじっと座っている中、暎人が使用人のように着々と準備する。
準備というか、茶葉のブレンドを考えているようだ。カップとソーサーが2セット置かれ、その間にピンク色の、薔薇のシロップだろうか。が置かれている。
湯もガラス製の電気ケトルの中でコポコポと小さな泡が沸き立つ。

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