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歪ーいびつー

第8章 朱莉



「中学の頃から夢に嫌がらせをしていたのは朱莉だね」
「……っ」
「やりすぎたね、朱莉」
「っ虫はやってないよ! ……あれは私じゃない! 」

奏多の腕に掴まり必死に訴える。

「もう俺に話し掛けるな」
「っ……! 」

突然冷たい表情へと変わった奏多が、そう言って私の手を払いのけた。

「お前はやりすぎたんだよ、朱莉」

私の耳元でそう囁いた奏多は、夢の鞄を机から取ると私を置いて教室を出て行った。

私は……。
私はただ、奏多の一番になりたかった。
奏多がこの学校に行くって聞いたから私はここを受験した。
夢が行くから奏多はこの学校へ進学すると決めた事はわかっていた。
それでも、側にいればいつか振り向いてもらえるかもしれない。そう思ったから。
でも、奏多はいつだって夢の事しか見ていなかった。私なんて、ただ夢と友達だったから奏多の近くにいれただけ。

高校に入ると、以前にも増して夢と奏多の距離は近くなっていった。私はそれが許せなかった。
だって夢は今でも涼の事が好きなのに……。
二人が付き合い出したと噂を耳にした時、私は大きく絶望した。夢が憎くて憎くて仕方がなかった。
どうして私から奏多を奪うの……?

それからの私は、以前から度々していた夢への嫌がらせを毎日するようになった。
だから……罰があたったのかもしれない。
自分のした行動のせいで、私は完全に奏多を失ってしまったのだから……。

一人取り残された教室で床へ崩れ落ちるようにしてヘタリと座り込んだ私は、床に着いた掌をキュッと握り締めると大きな声を上げて泣き叫んだーー。


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