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歪ーいびつー

第14章 優雨 4



それからの私は、涼の代わりに夢を守ると決めた。いつだって涼は夢を一番に考え、夢を守ろうとしていたから。
こんな事をしたって償えるわけではないし、綺麗事だって事もわかっている。
でも、涼を失った夢は見ていられない程にボロボロになっていった。
私のせいで夢の人生まで……奪いたくなかった。
夢には幸せになってほしいから。
だから……奏多は夢に近付かせたらいけない。

「ほら……夢、こっちにおいで。まったく……本当に悪い子だね、夢は。何度言ってもわからない……お前は俺のものなんだよ! 」

不気味に笑う奏多が、狂ったように叫びながら夢に近付いてゆく。
そんな奏多から夢を庇った楓が机にぶつかり、その机の上にあった裁断バサミが床へと落ちた。

「嫌っ! ……来ないでぇぇぇー! 」

夢の泣き叫ぶ声、朱莉の悲鳴、楓が奏多を押さえる姿。
どれもがスローモーションに見える。
私は床に落ちたハサミを拾うと、そのまま奏多の背中に突進したーー。

「……は? 」

ゆっくりと振り返る奏多。
ーー私の手には、血に染まったハサミが握られていた。
一瞬静まり返った教室は、朱莉の悲鳴で再び時間が動き始める。

「あんただけは絶対に許さない!! 」

目の前の奏多を睨み付けた私は、手に持ったハサミをギュッと握りしめて大声を上げた。



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