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美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜

第18章 ★君はやっぱり大切な人



『花音!ダメだよ、妊娠したらどうするの?!』

昨日、廊下でひぃくんが言った言葉。

それを思い出し、沸々《ふつふつ》と怒りが込み上げてくる。

あんなに大勢人のいる前で……
私がどんなに恥ずかしかったか。
もう、ひぃくんとは口利かない!

そう決めた私は、一階へ降りるとリビングの扉を開いた。
私の視界に入ってきたのは、お母さんと楽しそうに話すひぃくんの姿。

……なんで毎朝いるのよ。
さっきだって、目が覚めたら私のベッドにはひぃくんがいた。

小さい頃から当たり前とはいえ、もう中学生なんだから辞めてもらいたい。
それに今、私は怒っているのだ。

お兄ちゃんに連れられて私の部屋から出て行ったひぃくん。
てっきり自分の家に帰ったと思っていた。

私を視界に捉えたひぃくんが、私に向けてヒラヒラと手を振る。
プイッと顔を背けた私は、そのままダイニングへ行くと席へ着いた。

「おはようお母さん、お父さん」
「おはよう」
「おはよう、花音」

私の挨拶に、笑顔で答えてくれるお母さんとお父さん。

「今日のご飯も美味しそうだねー」

そう言いながら、ひぃくんが私の隣に座った。

なんて図々しい人なんだろう。
毎朝当たり前のように我が家で朝食をするひぃくんに、私は呆れて小さく溜息を吐く。

誰もこの状況をおかしいとは思わないのだろうか?
チラリとお母さんとお父さんを見てみると、ひぃくんと楽しそうに会話をしている。

その光景を見た私は、また小さく溜息を吐いた。
お母さんもお父さんも、ひぃくんに甘すぎる。
二人共、絶対にひぃくんの見た目に騙されてるよ……。

どうやら私の味方はお兄ちゃんしかいないらしい。
ジッとお兄ちゃんを見つめていると、私の視線に気付いたお兄ちゃんが笑顔で口を開いた。

「花音、早く食べないと遅刻するぞ?」
「……はい」

私の気持ちに気付いてくれないお兄ちゃんに、ガックリと肩を落とす。

仕方なく黙って朝食を食べ始めた私は、横から話しかけてくるひぃくんをずっと無視し続けた。


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