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ー恋慕ーもしも死んだ愛する人が、生き返ったとしたら(短編)

第1章 ー恋慕ー



それはある日突然の事だった。


今日もいつものように仕事を定時に終わらせた俺は、アパートの鍵を開けて誰もいない家の中へと入った。
玄関に飾られた写真にそっと指で触れる。

「ただいま、美希」

ポツリ、小さく一人呟く。
写真の中で、婚約者の美希が俺に向かって笑顔を見せる。

ーー俺たちは一年前、結婚するはずだった。
結婚式を一週間後に控えた俺に知らせが届いたのは、そろそろ仕事を切り上げて会社を出ようとしていた時だった。
今しまったばかりの携帯が鳴り出し、俺は鞄から携帯取り出すと画面を見た。
そこには知らない番号が。誰かと思いながらも、俺は画面に触れると携帯を耳にあてた。

「はい」
『ーーーー』

電話口からの知らせに、携帯を持つ手が震え出す。
俺の手に握られた携帯は、ついに力をなくした手から滑り落ちた。
美希が……美希が交通事故で亡くなったとの知らせだった。
それは、あまりにも突然の出来事だったーー。

あの日から俺は、美希のいなくなったつまらない人生をただ生きる為だけに淡々と過ごしていた。
今日もそう。それは変わらないはずだった。

テーブルに鞄を置き、ジャケットを脱ぐとハンガーに掛けようと寝室の扉を開けた。
寝室の前で突っ立ったままの俺の手から、ジャケットがゆっくりと床へ滑り落ちてゆく。
ーー俺は、目の前の光景にただただ驚愕した。

「おかえり、京ちゃん」

ベッドに腰掛けた美希が、俺に向けて笑顔でそう言う。
俺は震える身体でゆっくりと近付きながら声を出した。

「美希……? 本当に……美希なのか……? 」
「うん。京ちゃんに会いに来たよ」

そう言って俺に微笑みかける美希。
どんなに会いたいと毎日願った事か……。俺は震える手で目の前の美希に触れると、その存在を確かめるようにキツく抱きしめた。

「美希……美希……会いたかったよ……美希」
「私も会いたかったよ、京ちゃん」

美希はそう言って俺を優しく抱きしめ返してくれる。
これは一体どういう事なんだとか疑問はたくさんあるけれど、そんな事どうだっていい。腕の中にある確かな存在に、俺はただ喜んだ。
ーー美希がいる、それだけでいいんだ。


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