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Melty Life

第1章 告白



「偶然、見かけて知りました。今日、バレンタインデーに花崎先輩に告白するって、何日か前に来須先輩達が話していたんです」

「…………」

「ファンとか、憧れとか、そんな気持ちじゃ収集つきません。迷惑ですよね。あたしこそ変、っていうか、気持ち悪いストーカーだと思います……」

「そんなこと、ないよ」

「じゃあ候補に入れて下さい」


 …──積み上げてきたものが大きければ大きい分、わたし達の貯蓄になってるよ。


 あかりの胸に、いつかの、舞台の上での水和の声が響く。


 …──成功ばかりでは味気ないじゃない。失敗にも価値はあるよ。いつかチャンスが巡ってきた時、過去の失敗がもしかしたら経験値になるかも知れないし?


 随分、楽観的な台詞の多い役柄だった。あれが小説や漫画だったら、あまりに歯の浮くような綺麗事にうんざりして、書籍を壁に叩きつけていたかも知れない。

 こうも絵空事のような理想を生き生きと唱えていた水和は、やたら現実味があった。架空の人物を演じていながら、その声はまるで生々しかった。

 綺麗事や希望ばかりが、人を支えるとは限らない。ただし、それらを頭ごなしに拒んだところで、絶望や喪失を回避出来るかと言えば、それも違うのではないか?…………



「個人として、女性として、花崎先輩が好き」

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