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果実

第1章 モデルの依頼

「芙紗子 何やってるの 練習いくよ」
「うん」

ラクロスとはホッケーに似た球技の一種。
女子の場合12名の 選手が、先端に網のついたスティックでボールを扱い、
相手ゴールに入れて得点を競う 芙紗子はラクロスに夢中だった。昨日までは。

芙紗子はラクロス部の練習にも身が入らなかった。
「ちょっと芙紗子 練習中なのにぼーっとして」
「都大会近いんだよ 何やってるの」
「どうしたの芙紗子 何かあったの」
「うんちょっとね」

芙紗子は理由を話した。
「有栖川家の跡取り息子と御知り合いになった?」
「素敵」
ラクロス部の仲間が口々に言う。

「有栖川家の人と御知り合いになれるなんて」
「芙紗子頑張れ」

「集合」
コーチが声を掛けた。
「今日は大切な話がある 新チームのキャプテンを選ばないと行けない」


「キャプテンは手塚芙紗子」
コーチからキャプテンのフラッグを渡されると
芙紗子は深呼吸をした。
「芙紗子頑張ってね」
「皆をまとめていくんだよ」


「ねーお母さん私ね」
「芙紗子大変なのよ お父さんの会社が」
高校の授業料が払えなくなるなんて、夢にも思わなかった。
父親の会社が傾き借金だけが手元に残った。
芙紗子にはとてもじゃないけれど返せる額ではなかった。

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