テキストサイズ

甘い鎖~縛られて溶かされる~

第8章 奪われて…

あたしの部屋へ続く長い廊下。



月明かりの中、志桜さんとあたしの影がふたつだけ並ぶ。



心臓がドキドキして手が震える。



あたしは自分の部屋のドアを開けた。



志桜さんはぬいぐるみを背負ったまま部屋の中へ入る。



あたしは、彼がぬいぐるみを置くところまで部屋の外で見ていた。



「ここでいい?」



「あ、はい…」



「どうしたの?そんなところに突っ立って」



志桜さんが部屋から出てくると、あたしは無意識に離れた。



「ありがとう、ございました」



「いいんだよ」



彼が手を伸ばしてきて、とっさに顔を背ける。



ドクンドクンドクン…



「今日は、本当に楽しかったです。こんなにお祝いしてもらえるなんて、思っていなくて…嬉しかったです」



お礼を口にすると、彼はあたしの頭にぽんと手を乗せた。



「遠慮しなくていいよ。君はもう家族なんだから」



「え…」



見上げると、志桜さんはにっこりと微笑んでいた。



あ、優しい顔。



少し、心がほぐれた。



彼はあたしの頭を撫でる。



「優依のことをみんな家族だと思って大事にしているんだよ。だから、これからも遠慮しなくていい。特に、父には我儘を言ってもいいよ」



そう言って志桜さんが笑った。



あたしは安堵して、頬が緩んだ。



だけど。



トンッと壁に押しやられた。



「でもね、僕は別だ」



急に志桜さんの表情が様変わりした。



油断、した。











ストーリーメニュー

TOPTOPへ