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だから愛して

第1章 だから愛して

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 智さんは、いつも、
 「すぐ愛して
  いいの?」
 と言うのです。
 まだ朝の十時なのだから、しかたないかもしれません。
 そんなところに、智さんの年令からくる、はにかみというかたしなみというか、そんなものを感じます。 
 でも、十時だろうと八時だろうと、愛しあう二人がよければいいのだと思います。
わたしがそう言うと、そのときは智さんは、わかったと言いますが、やはりいつも、
 「すぐ愛して
  いいの?」
 と言います。
 わたしは、智さんが大好きですから、もっともっと愛してもらいたいのですが、大学生で両親と一緒に住んでいますので、土曜日か日曜日にしか愛してもらえないのです。
 だから来られる日は、朝はやくにタクシーで智さんに逢いに来ます。
 わたしの家から智さんの家までは、同じ大阪市内だけど電車ですと路線の関係で一時間近くかかりますが、タクシーでしたら二十分もかかりません。
 智さんが、タクシーで来たらいいよと言ってくれまして、到着したら待っていて料金を払ってくれます。
 智さんは、タクシーで来たら早く着くからいいよねと言いながら、わたしがすぐ愛してほしいと言うと、
 「すぐ愛して
  いいの?」
 と言うのです。
 ほんとは、智さんも、すぐ愛したいと思っているのにです。
 わたしは、そんな智さんを、可愛いと思っています。
 「さやかちゃん
  シャワーは?」
 「寝汗をかいたから
  朝シャワーしてきたの
  だから
  いいわ」
 「私も
  さやかちゃんが
  来てくれるので
  シャワーはすましてる
  じゃあ
  二階に
  行こうか」

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