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ぼっち─選択はあなたに─

第5章 ソルトの町【選択3】

「え~ん、え~ん」
「う……うう……」

 子供と男の声が交互に聞こえる。
 ヒカルは迷ったが、子供の方に声をかけることにした。やはり泣いている子供はほっとけない。

 辺りはもう薄暗くなっていた。町の灯りもいまいち頼りない。ヒカルは慎重に子供の声がする方向へ歩き出した。

「え~ん、怖いよぉ! 真っ暗だよぉ!」

(真っ暗ってことは、灯りが届かない場所にいるんだよね……)

 ヒカルはふと幼少時代のことを思い出した。
 よく両親に躾として、押し入れの中に閉じ込められたことがある。本当に真っ暗で、ほんの数分でも怖くてずっと泣いていたのを覚えている。

(早く助けてあげなくちゃ……)

 早く安心させてあげたいという気持ちで、ヒカルは薄暗い路地へと入っていった。

「え~ん、え~ん」

 子供の声がはっきりと聞こえてくる。
 すると奥の方でジャリッと音がした。

「マ……マ? パ……パ?」

 こっちの姿に気づいたのだろうか?
 子供がこっちに近づいてくる気配を感じた。

「大丈夫? 怖くないよ、一緒にかえ……」

 ヒカルがそう声をかけた途端、無数の黒い触手がヒカルの体を突き抜けた。

「かはっ……」

 赤い血が飛び散る。
 無数の触手は更にヒカルの体に巻き付き、バキバキと骨を砕いた。

「……っ!!」

 意識が遠退いていく。
 闇に飲み込まれていく。

 ──ああ、私はまた、ひとりぼっちだ……




【END】

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