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僕は貴女を「お姉ちゃん」だと思ったことは一度もない。

第5章 運命の日

 受験生にとって「運命の日」というのは、試験当日を指すのだろうか。それとも、合格発表の日なんだろうか。そして、恋を…特に、片想いをしている、世の中のすべての人たちにとって、運命の日には何が起きる…?

 鈴の志望校の入試本番の日と、俺が受ける中学の入試本番の日は、同じ日だった。ちなみに、俺は滑り止めは受けていない。落ちた場合は、地元の公立中に進学すればいいだけだからだ。鈴は、第一志望校と滑り止めと、あわせて2校を受験する。滑り止めのほうは、鈴が現在通っている私立女子高の系列大学だから、半分、内部進学のような扱いで、簡単な試験があるだけなのだそうだ。
 
 俺の試験と鈴の試験が同じ日にある、たったそれだけのことで、なんだかシンクロしているような気がして嬉しかった。本当は全然大したことじゃないのに…。こんな些細なことでも喜んでしまう自分がなんだか…さみしかった。受験生にとっての運命の日。そして、俺にとっての運命の日は…いつ来るのだろうか。何が起きるのだろうか。諦めちゃダメだって気持ちと、どうせ無理だからさっさと諦めたほうがいいって気持ち、2つの気持ちが自分の中で揺れている。

 出会いかたが…いや、出会った時期が悪かったんだ。6歳と12歳なんて、なにかが始まるはずもないのに…。幼過ぎた自分を恨む。そして、いまだに子どもな自分が、もどかしい。

 試験自体は、楽勝だった。発表の日はまだだけど、たぶん、合格してる。それよりも、鈴姉のことが、鈴姉の合格発表の日のほうが気になる。鈴姉の第一志望は県外の大学だ。だから、受かっていれば家を出て一人暮らしを始める。そのまま系列の大学に進んだ場合は自宅からの通学だろう。

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