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僕は貴女を「お姉ちゃん」だと思ったことは一度もない。

第2章 1年生と1年生

そして、春。

 僕は小学校に、鈴は中学校に入学した。鈴の入学した私立の中学は女子校で、僕は、そのことに、何故だか分からないけど少しだけ安心していた。

 当時は何に安心していたのか自分でもよくわからなかったけど、今なら分かる。女子しかいない学校なら、鈴を、他の男に取られる心配がないと思ったんだ。

 ーー鈴は僕の、初恋だったから。

 当時は、その感情が『恋』だとすら気付かずにいたけれど。それでも、鈴のことは大好きだったし、ずっと独り占めしたいと思っていた。鈴は僕を、弟のようにしか思っていなかったみたいだけど。

「いつきー。勉強頑張ってる?わからないとこあったら、いつでもお姉ちゃんが教えてあげるよ?うりうり~」
「鈴のほうこそ、中学に入って勉強が難しくなったんじゃねぇのかよ?大丈夫か?あとさ、新しい学校では、いじめられてないか?もし何かあったら僕が助けてやるよ!」
「ナマイキ言わないの。いじめは、大丈夫よ。新しい友達も出来たしね!あと、私のほうが年上なんだから、呼び捨てにしないの!せめて『鈴姉』ぐらいにしなさい」
「すず…ねぇ」
「はい。よく出来ました~」

頭をぐちゃぐちゃに撫でられる。子ども扱いしやがってとは思うけど、実際に子どもだから仕方ない。この時の僕の身長は122センチ。小学1年生にしてはまあまあ高いほうだとは思うけど、中学1年生になった鈴は152センチ。鈴と比べて30センチもチビだから、そりゃ頭だってナデナデされる。悔しかったら、早く大きくなるしかない。

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