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僕は貴女を「お姉ちゃん」だと思ったことは一度もない。

第8章 入学式

新しいスーツを着て、サキちゃん仕込みのメイク(ちゃんと普通のメイクも練習した)をし、いざ入学式。

学長の挨拶とか、校歌斉唱とか…まぁ、ありきたりで退屈なごくごく一般的な式。でも、大学の入学式で大事なのは、終わった後!

あちこちで繰り広げられているクラブ・サークルの勧誘活動の輪をかいくぐり、目当てのクラブを探す。

目当てはもちろん吹奏楽部。
ここの大学は、学生オーケストラも、吹奏楽部も、ブラスバンド同好会も全部あるし、吹奏楽部なんて2つある!
まぁ、2つあるっていうか、片方は部で、もう片方は同好会なんだけど。で、同好会のほうは、吹奏楽部に入れなかった人たちが創設したものなんだけど、地域の文化祭とか町内会のお祭りなど、いろんなところに積極的に参加したり、他校(大学だけでなく、地元の高校や専門学校とも)の吹奏楽部とコラボしたりとかいろいろやった結果、今じゃ同好会のほうが有名だし、人気も高い。

でも私が目指すのは、昔からある同好会ではない吹奏楽部のほう。知名度では劣るが演奏レベルはこちらのほうが格段に上…。

しかし、見当たらない。入学式の日に新入生向けの勧誘活動をしてないってことは、パートに空き枠が無くて新たな募集をかける予定が無いってこと??
でも、4年生が卒業したらそこのパート、空くよね?
なんで見当たらないんだろう…。

あっ、見当たらないと言えば、中村君って今日の入学式、欠席したのかな? 中村君の姿も、見てないな…。スマホを取り出し、電話帳検索で中村君の番号を画面に出す。電話をかけようとして、やめる。周りがあまりにも騒々しかったから。

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