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ここから始まる物語

第7章 脱出

 フウは腕組みをして、肩を震わせています。きっと仮面の奥には笑顔が隠されているのでしょう。
「助けてくれ、レナ!」
 ずっと一人で遠くに座っていたレナに、ピスティは声をかけました。レナも安心したのか、ピスティを指さして笑っています。
 儀式に負けたことは悔しかったけど、なんだか、どうでもよくなってしまいました。
 されるがままに胴上げをされていると、ふと、何か異様なものが目にとまりました。
 遠くに、煙が立ち上っているのです。
 黒い煙が、幾筋も立ち上っています。
 普通の煙ではありません。夕焼けに染まる空を、真っ黒い煙が覆っています。
 火事だろうか、と思って見ていると、さらに異様なものが見えてきました。
 それは、旗でした。
 三角形の旗です。赤い旗の真ん中に、頭がふたつあるライオンの姿が描かれています。
 ――あれは。
 心臓がどきりと鳴りました。
 あの旗は、エカタバガン帝国の旗です。
 エカタバガンは、アウィーコート王国の北に隣合っている、巨大な帝国です。
 きっと攻め込んできたのでしょう。
 泣き叫ぶ声と怒鳴り声が混じりあって、わずかにではありますが、ピスティの耳にも届きました。
 その声を聞いてか、ゲンとライは、胴上げをやめました。そして、ピスティをそっと地面におろしました。
「城へ行こう」
 ピスティは、仲間たちと共に、すぐに駆け出しました。レナがひとりで途方に暮れていることも忘れて・・・・・・。

 ※

 いきなり攻め込んできたエカタバガン帝国。アウィーコート王国は、このまま攻め滅ぼされてしまうのでしょうか。
 城へ戻ったピスティを、どんな試練が待ち受けているのでしょうか。
 取り残されたレナは、この先どうなってしまうのでしょう。

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