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ここから始まる物語

第8章 企みの底で

 森に茂る樫は、誰のものでもありません。あれを伐ったところで、誰も文句は言わないでしょう。
「それからピスティさま」
「なんだ」
「城の中に、鎧はいくつありますかな。壊れたものでいいのです。それも全ていただきたいと思うのですがな」
 壊れたものでいいのなら、いくらでもあります。そんなものがなんの役に立つのかわかりませんが、ピスティはそれも承知しました。
「ありがとうございます」
 そしてゲンは、フウに何事か告げました。
「委細承知」
 短いやりとりでしたが、フウは、ゲンの言ったことを引き受けたようです。フウは旋風を巻き起こすと、一瞬にして姿を消してしまいました。
「何を考えているんだ、ゲン」
 ピスティが尋ねると、ゲンは顔を笑みで皺くちゃにしました。
「この戦い、我らの勝ちですぞ」
「どうしてそんなことが言えるだよう」
 ライにも、事情が飲み込めていないようです。
「まあ落ち着け。ライ、それからピスティさま」
 ゲンは、二人を交互に見ます。
「お二人は、これから兵士たちを連れて、街を囲む門の近くに言って下されい。そして――」
 ゲンは、ピスティとライに、何をするべきかを話しました。それは、ごく簡単なことでした。
「その間に、わしは準備をしてきますでの。なに心配することはありませんぞ。千軍万馬を得た気持ちでいてくだされ。そして、この戦いが勝った暁には――」
 ピスティさまを王座へと導きましょう――とゲンは言いました。
 どうしてピスティが王さまになれるのでしょう。ピスティには、いまいちかわかりませんでした。

 ※

 勝ち目のない戦いを前に、ゲンは何を考えたのでしょうか。そしてフウは、どこへ何をしに行ったのでしょう。
 いよいよ、物語前半のクライマックス! 次回は「アウィーコート大戦役」です!

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