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第2章 村に迫る危機

 ピスティには、どちらの言い分も理解できました。村を捨てようが、村に残ろうが、彼らは助からないのです。
「王子さま。オラたちはどうしたらいいだか」
 太っちょの男が、眉を八の字に歪めて尋ねます。
「事情はわかったよ。ここは俺に預けてくれないか。みんなは安心してこの村で暮らしていればいい」
「大丈夫だか。いくら王子さまでも、ディモナスを相手にしちゃあ危ないだよ」
 心配する声に、ピスティは答えず、フフンと鼻を擦ってみせました。
 ピスティは王子です。国を治める一族の一人です。アウィーコート王国に暮らす人々を、たとえ一人といえども不幸にしたくはありません。だから絶対にディモナスなんか退治してやろうと思っていました。
 でも、そんな使命感とは別に、面白そうだとピスティは思ったのでした。
 今までにもたくさんの悪さをしてきましたが、今回はその中でも抜群に興奮する出来事になるでしょう。なにしろ相手は怪物です。しかも集団です。それを退治することを考えると、もう身体じゅうの血が騒いでたまりません。そして退治した暁には、きっと胸がすっきりしているでしょう。
「みんなは、もう家に帰っていいぜ!」
 ピスティは手を振りながら、村人たちから遠ざかっていきました。

 ※

 残された村人たちは、みんな呆然としていました。
「あの王子さまは、昔から手がつけられねえって聞いてたけど、本当にやんちゃだな」
「怪我しねえだかな」
「言っちゃあ悪いが、ありゃあ馬鹿だ。ディモナスなんかに、勝てるわけがねえだよ」
 口々に、ピスティを褒めたり心配したり馬鹿にしたりするのでした。

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