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奇跡を信じて

第1章 運命の電話

 その日、高校時代の友人であった田村から、私(白鳥)の携帯へ連絡が入ったのは、夜の11時を過ぎていた。
 田村は現在、プロ野球で有名な大阪ジャガーズで活躍している選手である。

 当時、彼は高校での三年間、硬式野球クラブに在籍しており、三年の時、4番打者で甲子園では準決勝まで進み、その大会で、ホームランを6本打ったこともあった。

 その後、彼の努力が実りドラフト3位で、大阪ジャガーズに入団することができた。

 彼は今年で13年目のベテラン選手である。

 しかしながら、マスコミの噂では、彼の昨年度の成績が思わしくなく、今年で引退であろうと囁かれていたのであった。

 その彼が今年、奇跡を起こすことになるとは、誰もが予想をしていなかった。

 私は携帯に登録されていない番号を、少し不審に思いながらも、

 「はい、白鳥です」

 「田村です。高校の時、同じクラスだった田村です」

 「久しぶりだな、田村!」と私が言うと、

 「悪かったな、こんな遅い時間に」

 「ところで、どうして俺の携帯番号を知っていたの?」と私が聞くと、

 「2年前の冬に、高校の同窓会があっただろ。その時、白鳥から携帯番号を教えてもらったのに、急いでいて俺の携帯番号を言い忘れてしまったんだ。 当時、白鳥が確かホテルに勤めていると聞いたものだから」と田村が言うと、

 「なるほどね、やっと理解ができたよ。それで一体どうしたの? 又、同窓会でもするのか?」と私が聞くと、

 「いや、違うんだ。今度、白鳥が勤めているクイーンズホテルを利用させてもらいたいと思って」

 「どうもありがとう。 田村が宿泊をするのか?」

 「泊まりではなく、宴会場を利用したいので、白鳥に相談しようと思って」と田村が言った。

 「そうか、わざわざ電話をくれてありがとう」と私が言った。

 「近いうちに会えないか?」と田村が聞くと、

 「そうだな、今週の金曜の夜なら、俺は夜勤明けで、翌日が休みだからありがたいんだけど」と私が言った。

 そして、私達の待ち合わせ場所は、大阪市内のRホテルのバーラウンジに、21時と決めた。

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