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奇跡を信じて

第12章 大地からの手紙


 新大阪駅では、すでにチームメイトが到着していた。

 田村は平田コーチに礼を言い、新幹線に乗り込んだ。そして、平田に真実を話すことにした。

 その話を終えた後、
 「その少年のためにも良い成績を残すことだな」と平田は言った。


 現在、ジャガーズは10勝15敗である。首位のパイレーツとは、6ゲーム差となっていた。

 ジャガーズは、その後、横浜へ移り、レンジャーズとの3連戦があった。

 そして、ジャガーズは接戦ではあったが、何とか2勝1敗とした。

 試合後、田村は広報の担当者から一通の手紙を渡された。

 差出人を見ると、村山大地となっていた。

 田村はすぐに封を開けた。


    たむらせんしゅへ

 このまえ、おみまいにきてくれてありがとう。
 ボールがもらえてうれしかったです。 
 だいじにします。
 ぼくもがんばって、びようきをなおすので、
 たむもがんばってください。

 いえのでんわ 06 6236 xxxxです。

                むらやま だいち


 真剣に手紙を読んでいた田村に、平田が声をかけた。

 「女性からのファンレターか?羨ましいね」と平田が皮肉を言うと、

 「いえ、5歳の男の子からですよ」

 「え、5歳の男の子?」と平田が聞くと、

 「先日、平田さんに話した例の男の子からです」

 「あの病気の子どもさんの事なのか?」と平田が聞いたため、

 「ええ、そうです。なぜかその子に会ってから、不思議と彼のことが気になってしまうのです」


 田村は、5年前の悪夢を思い出していた。もし、あの事故さえなければ、自分の子供もあの少年と同じ年頃であったはずだ。しかし、その少年は今、白血病と闘っているのである。当時の事故の件は、平田にだけ話をしていた。もちろん、他の選手は知るはずもなかった。ただ、その大地からの手紙をもらってから、田村は悩み、自分の愚かさを恥じた。今までの気持ちのままで、野球を続けることは、ファンの方々にとって失礼なことは明白である。もちろん、球場へ足を運んでくれる人達は、お金を払って見に来てくれているのだ。中途半端な気持ちであれば、試合に出ないほうがましだと...

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