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不純異性交際(上) ―ミライと瀬川―

第16章 埋められない溝



結局その夜も、次の日も…またその次の日も、私たちは言葉を交わさなかった。



大晦日を迎え、私は1人で暗い気持ちのまま新年を迎えてしまった。

0時を過ぎたパソコンの時計を見つめ、”まぁ…誕生日とか年越しとか、イベントにこだわる歳でもないか…”と自分に言い聞かせるように考えながら、ソファで眠りについた。



---…


目が覚めて携帯を確認すると、バラ組のほかにも数件のメッセージが入っていた。


この仕事部屋はとても静かで、エアコンからの暖かい風の音だけがかすかに聞こえる。私はブランケットに全身くるまれ、新年早々むなしい気持ちで佇んでいた。



ブランケットを肩に巻きつけたまま、キッチンへ向かう。リビングを通るとフミはソファに寝転び、正月の特番を見ていた。私には目もくれず、テレビに映るお笑い芸人の言動に時折ふふっと笑う。


歩み寄る気持ちは数日前の口論で今度こそゼロになってしまった。お互いがそこに存在しないかのように振る舞い、それに対しての疑問も持たなくなっていく。




温かいチャイティーを淹れ仕事部屋に戻ってくると、カーテンが閉ざされた薄暗い室内で携帯が光っている。

瀬川くんからの不在着信だ。すぐに折り返すと、キャンプ以来の彼の声が耳を優しく包む。


「もしもし。明けましておめでとう。」

「明けましておめでとう!」
口にすると初めて年が明けたことを実感したような気がした。


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