不埒に淫らで背徳な恋
第6章 【守るべきものがある人生は幸福ですか?】
本社といえば福岡市内。
家具付き社宅はあるし何の出費もなく行けるから楽だと思う。
それに本社でもっと実務経験出来れば出世街道まっしぐらだ。
悩む必要なんてないのよ…?
今夜はそう教えてあげる。
考える時間が必要だろうから早めに言うね?
暗い顔しながら部屋で待つキミに追い打ちをかけるのかと思うと気が重いけど、きっとこの選択が間違ってなかったってことを後々証明出来るんだと信じてる。
キミの部屋に決めたのは出て行きやすくする為。
嫌な思い出落としていくから。
着くやいなや抱き寄せる腕。
待って……今日はそんな気分じゃないの。
身体を離しソファーに座らせた。
「部長から聞いてる……その事で悩んでるんでしょ?」
私から切り出すと目を逸らして項垂れる。
「瑠香さんと離れたくないです」
やっぱりそう言うよね。
以前の私なら引き止めただろうか?
私も離れたくないって思った?
「でもどうしようもないじゃない、所詮私たちは社員であって従わなければならないでしょ?」
「嫌です」
こうなるのも想定内。
そこが可愛いとさえ思ってた。
全ての仕草に心奪われてたの。
そんな想いに蓋をする日が来るなんて……
気丈に振る舞えるだろうか。
「佐野くん、迷ってないで行きなさい」
「瑠香さんは平気なんですか!?僕と離れて…」
「平気よ」
「嘘だ…」
真っすぐな瞳に屈しないよう毅然とした態度で挑む。
「ねぇ、これが良いきっかけだと思わない?」
「え…?」
「私たち、リセットしよう」
驚いた表情で私を見上げてる。
上着も脱がないまま立つ私に距離を感じて欲しい。
「どういう……意味ですか?」
「そのままの意味よ、元の上司部下の関係に戻るだけ」
「僕が嫌いになりましたか?邪魔ですか?好きじゃなくなったから行けって言うんですか?」
「違う……そうじゃない」
「じゃ、何で!?」
腕を掴まれ視線が重なる。