不埒に淫らで背徳な恋
第7章 【愛欲に溺れるのは不修多羅ですか?】
「え…?」
さっきのSっ気はどうした!?
両手握られ頭を垂れている。
「聞かなきゃだけど聞きたくない……」
「田中くん……」
「もう少し待ってください」
「う、うん……」
「あの、やっぱ聞かなきゃダメですか?保留にしてもらってもう少し僕のこと考えてもらうわけには…」
目が合って首を横に振る私を見て
「ですよね、女々しくてすみません」と肩を落としている。
そういうとこ母性くすぐられて可愛いなって思うけど……私自身、一線を引くとは具体的にどういうことなのかよくわかっていなかったりする。
「でも僕は……マネージャーが離婚されて正直喜んでしまったズルい男です…やっとチャンスが巡って来たのかもって思ったら我慢出来なくなって」
正直に話すんだね。
純粋過ぎて……眩しいよ。
私には勿体ない。
「ふられるってわかっていても悪あがきしちゃうんです……嫌われたくないのに」
「嫌ったりしないよ」
「僕の長い片想いに終止符を打ってください……キスして」
強く見据えたり甘くおねだりしたりと表情筋が忙しい。
ここで何でキスなの?とは聞けない空気感。
最後の思い出が欲しい…と言わんばかりに再び瞳で誘惑してくる。
ずっと好きで居てくれて……
その想いがブレることはなかったのだろうか。
こんなに求愛してくれて甘えた声でキスをおねだりされてる。
最初で最後のキス…?
キスしたら終わるの…?終われるの…?
それは無理でしょ。
私は諦めさせるキスなんか出来ない。
簡単に許しちゃうものでもない。
何て言えばいい?どう伝わる?
わからない……
だからこうして手を差し伸べてしまうのだ。
「キスは出来ない……ごめん。私の性格わかってるでしょ?今はこれで許して?」
そう言って私から優しく抱き締めた。
何もかも包み込んでしまえばわかってもらえるなんて安易に考えてはいないけど。
真っすぐぶつかってきてくれたからこそ真っすぐ伝えたい。
「ありがとう……2回も好きって言ってくれて、凄く嬉しいよ……田中くんとは一番長い付き合いだから一番思わせぶりなことたくさんしてきたかも……ごめんね」