不埒に淫らで背徳な恋
第7章 【愛欲に溺れるのは不修多羅ですか?】
ガ、ン、バ、レ……と口パクしたら窓を閉め発進する。
バックミラーに映る月島くんは見えなくなるまで深く頭を下げていた。
卒なくこなしているように見えていっぱいいっぱいなところを垣間見た。
何だ、ちょっと安心。
可愛いとこあるじゃん。
私の方の打ち合わせは長引いて少し遅くなった。
あの製薬会社の担当者、話長いんだよね。
まとめといてほしい。
結構年配だから話逸れてばっかだし。
ドッと疲れて帰社したのは6時過ぎ。
ほとんど退社していておそらく私一人だろうと思っていたのに。
デスクに座りパソコンに向かって真剣な顔しながらタイピングしている月島くんの姿が目に入ってきた。
「お疲れ様です!」と立ち上がる。
あまりにも疲れていたのか、端正な顔立ちに見惚れていたのかボーッと見つめたまま立ち尽くす私。
「マネージャー?」と声を掛けられハッとする。
「お疲れ様……皆帰ったと思ってたからびっくりしちゃった」
今日は早いとこ切り上げて退社しようとメールチェックしたらパソコンの電源を落とすと決めた。
「そっちはどうだった?上手くいった?」
目線はパソコンに向いたまま社内で二人きりの月島くんにそう言った。
「はい……何とか」
「あれ?歯切れが悪いね」
「相当値切られました…」
「やっぱそっちもか……HASIMOTO化粧品も担当者変わったんだよね?うーん…」
「あ、あのそれで次回案まとめてみたんですけど」
「どれ?見るよ」
「でもお疲れじゃ……明日提出します」
パソコンの電源を落とし席を立つ。
月島くんのデスクに行くとめちゃくちゃ練ったんだろうなってひと目でわかるくらいメモ書きがぐちゃぐちゃに広がっていた。
まるで田中くんみたい。
「今見るよ?まだ明日の準備に時間かかるんでしょ?」
横に立ちそう言うと申し訳なさそうに頭を下げてプリントアウトしてくれた。
「あ、珈琲淹れます」
「ううん、いい。自分で淹れるから」
たった今プリントアウトされた書類に目を通しながら珈琲を淹れソファー席に腰を下ろした。