不埒に淫らで背徳な恋
第8章 【本能のまま乱れ咲くのは愛と呼べるでしょうか?】
見た目は少しチャラくてグイグイ来る人だったからある一定の距離を保つのに必死だった。
見た目とは裏腹に仕事は出来る人だから一目置いていたのも事実だし、尊敬していた。
それは今も変わらない。
だからこそ真剣に答えなければならないこともわかっている。
「瑠香ちゃん……?」
心配そうに覗き込む社長の前でポタポタと溢れ出る涙が止めれなくて焦る。
「ごめんなさい……泣くつもりじゃ」
思わず両手で頬を拭う。
不意打ち過ぎてびっくりしたのと、こんな私を必要としてくれる温かさに張り詰めていたコップの水が溢れてしまっていた。
「キミと出逢って僕の人生は一変した……随分待ったんだ、もう焦らさないでくれないか」
今までに何度かこんな顔をされたことはあるがいつもの冗談だと受け流していた。
結婚してからも同じ態度だったしいつでも何処でも口説くのが趣味なんじゃないかと思うほど他の誰かにもそうしているんだと。
「びっくりさせちゃってごめんね?いつもの調子じゃないから逆に困らせたかな」
「いえ……あの、ありがとうございます」
「信じてもらえないかも知れないけど、さっきも言った通り僕はキミに出逢った時点からずっと想い続けてるんだ、それだけは信じて欲しい」
「はい」と返事する時にはもう涙は止まっていた。
まさかそんな前から想われていたなんて今初めて知った。
嬉しさよりも戸惑いの方が大きい。
仕事関係者だからと線引きしていたのもあるけど、何気に色々と傷付けてしまってたんだよね。
見た目のチャラさが原因だよ〜!
最初からスルーしてました。
「まさかもう、すでに誰かのものなんかじゃないよな?」
急に話が飛んでびっくり。
慌てて否定したら胸を撫で下ろし安堵の笑みを浮かべてらっしゃる。
ちょっと苦手だな……この雰囲気。
全然慣れない。
だって小山社長はずっと私の中で……
「っていきなり言われてもすぐには気持ち切り替えられないよなぁ…!だからこれからはプライベートでも少しずつ知ってもらえればな…って思ってる」