不埒に淫らで背徳な恋
第10章 【不埒に淫らで背徳な愛なら許されるのでしょうか?】
「どうしてそんな嘘つくんですか?さっきの瑠香さんが本物でしょう?」
「違っ…!」
ドアの前で不意をつかれたキス。
重なったら……全部水の泡になる。
剥がれてく……何の鎧もなくなるの。
怒ってよ……罵ればいいじゃない。
何で……何でこんな優しいキスするの?
無理やりでも犯されるわけでもない。
ただ……蕩けるだけのキス。
「普通、セフレ相手に泣かないでしょ?今のキスも嘘の瑠香さんなら受け入れないはずだ」
親指で拭ってくれる頬。
見透かされてる。
キミのキスは拒めない。
どうしようもないほど求めてしまう。
ただひたすら溢れる………好きなの。
「今の自分を責めないで。一人で悩まず二人で解決していきましょう」
「え…?」
「わかってください……これからの僕の人生は瑠香さんナシじゃ始まらない」
ヤバい……溢れる。
「最初に交わした約束、覚えてますか?」
俯いたまま、止めどなく流れる涙に鼻をすする。
脳裏に蘇る記憶。
ちゃんと覚えてるよ。
でも果たせるかはわからない。
「次の業績発表で結果残しましたから」
「えっ…?」
「2年かかっちゃいましたけど」
初めて、資料室で唐突に交わした約束。
“営業成績No.1になれば僕とデートしてください”
まさか、本気で…!?
「僕と何回もデートして、僕のものになってください」
「そんな約束じゃなかった…」
「今、追加しました」
一寸の狂いもなく重なる唇。
抵抗すら出来ない。
本当、中毒性のあるキスだ。
ほんの足掻きで襟元を掴む。
「待ってますから…」
反論出来ないこと知ってて言うのね。
このキスに溺れてるから。
何も出来なくて彼の舌を待ってる自分が腹立たしい。
拒みたいのに力が入らない。
むしろ掴んだ手で引き寄せてる。
「どっちと居た方が幸せなのか……よく考えてください」
鼻の先だけがくっついてる距離でこのセリフ。
自分の中の理性を掻き集めた。
必死に抑えようとした。
要らない………快くんなんか。
出来るものなら拒んでみろ……って言われてる気がした。
出来るはず………ないじゃない。