
不埒に淫らで背徳な恋
第2章 【秘密を共有するのは罪ですか?】
得体の知れない感情に正直戸惑ってる。
「チーフ?どうしたんですか?」
キョトンとした佐野くんを見てフッと笑う私はどうかしてるのかな?
「ねぇ、佐野くん。また付き合ってくれない?」
コンビニ袋を見せて誘ってしまった。
適当に買ったお酒とおつまみ。
会社で飲もうなんて意外過ぎた?
普段見せない顔、またひとつ見せちゃった。
「はい…!」って想定通りな反応。
こういう時の体育会系は助かる。
早く早く…と手を引かれ佐野くんの方がはしゃいでるとか、そこは想定外。
引かれる手を見つめながら、全然違うと感じれずにはいられなかった。
稜ちゃんに掴まれた時と今の佐野くんは全然違う。
触れてるところが熱くなる。
童心に返るって言うの?
こんな楽しそうにクシャッと笑われたら嫌なこと忘れちゃう勢い。
フロアの電気をつけようとする手を止めた。
「会社で飲むとかバレたらヤバい」と小声で伝える。
勝手をわかっている私が今度は手を引いて奥の会議室にこっそり侵入した。
カーテンを開ければ向かいのビルの電飾看板が反映して夜でも少し明るく見えるのだ。
「なるほど、これなら電気つけなくても見えますね」
窓を全開にして風を入れる。
会議室の長机に腰かけ袋から缶ビールを差し出した。
「あれ?この前みたいなやつ、やってくれないんですか?」
「え?この前って?」
思わず聞き直したら受け取った缶ビールを私の頬にくっつけてきた。
「わ、冷たっ…!」
「アハハ…!それそれ」
ああ、バッティングセンターの缶コーヒーでやったやつね。
プゥ…と頬膨らませて今度は拗ねてる。
「僕は鮮明に覚えてるのにチーフは忘れちゃうんですね?」
「いや、忘れてないよ?」
「本当ですか〜?」
「本当、本当。乾杯しよ?」
カチン…と缶ビールをくっつけて口に流し込む。
実はめっちゃ飲みたかった。
「あと10分待って来なかったら素直に帰ろうって思ってました」
「え…?」
「電話切って、もし向かってくれてたらもうすぐ着くはずだって…あと10分…あと10分…って納得いくまで粘ってました」
