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不埒に淫らで背徳な恋

第2章 【秘密を共有するのは罪ですか?】





頭の中じゃ喜んでる。
だからって私のしたことは許されることではないんだってことも理解してるはず。
はずなのに……






「畠中チーフ、おはようございます」




「おはよう、佐野くん」




何気ない挨拶でも視線に込めてる。
あれから二人きりになれば少し甘えてくる彼だけど、充分距離を保って会社での立場やわきまえを教えてるつもり。
つまり、完全にシロと思わせる二人でなければならない。




移動中も取引先でも社員証をつけている間は私たちにプライベートはないの。
勿論、他の社員が目の届く範囲も注意が必要だね。




我慢……させ過ぎちゃうけど彼はわかってくれている。




「10秒だけ…」と社用車の中で手を繫ぐ。
10秒経ったら手を離しあの笑顔を見せてくれる。
そんなことでチャージ出来ましたって言わせてる。




抱きしめたい気持ちをグッと抑えてハンドルを切るの。
本当はどこかで停めてキスしたい。
でもそんなことしたら自分が止まらない気がする。
それこそ誰かに見られていたら今までの努力が水の泡だ。




ほんの少しの欲情に負けて失うわけにはいかない。




「ただいま戻りました〜」




「あ、畠中チーフ!大変です〜」




予定表ボードを消していると後輩のみなみちゃんが待ってましたとばかりに来た。




「どうしたの?」




「アレ……なんですけど」




迷惑そうに指差した方向を見てみるとギョッとした。
ある一角だけ空気がどんよりしているのが見てわかる。
同じく社員の田中くん。
みなみちゃんとは同期で2年目なんだけど……




「発注数ミスしちゃって先方さん怒らせちゃったみたいなんです。部長が対応して何とか間に合ったから良かったんですけど……かなり落ち込んでます」




あちゃ〜。
部長からも慰め宜しくとアイコンタクトが。
こういうのも私の役目だったりする。
仕方ないよ、誰でもミスはある。
次頑張りなよ…ってありきたりな言葉じゃ響かないんだよね、今時の子たちは。





さて、どうしよっかな……?




心ここにあらず…な顔して仕事も身に入ってない田中くんをコーヒータイムに誘う。








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