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3度目にして最愛

第3章 3度目にして最愛


1年後、身内や親戚、親しい友人だけを招き、一生自分には無縁だと思っていた協会で水城は東条と結婚式を挙げた。
友人代表スピーチをやりたいと名乗り出た喫茶店経営の友人は、結婚式当日「本日は誠におめでとうございます」の一文から涙声になっていた。
僻んで下を向いて歩いていた水城はもう何処にもおらず、お節介でしかないと思っていた友人を結婚式場ではただ微笑ましいと思っただけだった。

その後、寿退社した彼女は、新居にて汗水垂らして働く夫の帰りを待つだけのただの女になった。
ただの女になったのだ。
家事全般を卒なくこなし、いつか自分も底の無い優しさを夫に注げる人間になりたいと心から誓う、ただの幸せな女になったのだ。






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