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変態ですけど、何か?

第13章 玲子先生 ~留学~

話を聞くと、
「少し調律がおかしい」
と言う。

玲子先生は驚いた。

ほんの一週間前に、調律を済ませたばかりだったから。

「普通の調律なら、これで充分ですよね。
でも、玲子が弾くピアノがこれではいけない。
音が濁ってしまう」

彼は、玲子先生の返事も聞かず、鍵盤を外して調律を始めた。

2時間ほどかけて、調律したあと、ゲオルグが言った。

「弾いてみて下さい。本当の玲子の音がするはずです」

玲子先生は、最初の一音を弾いてみて、身体中に戦慄が走ったと言う。

「音がね、澄みきってるの!それに、生きてるの。今まで、どうしても濁りが取れなくて、自分の限界を感じてたところが、身震いするほどきれいな音で鳴るの!」

玲子先生は、興奮気味に話す。

「『これが、あなたの音です』って、ゲオルグが言って。
私ね、ゲオルグのレッスンも忘れて、何曲も弾いていた」

こうして、玲子先生とゲオルグの距離は近づき、
やがて愛情が生まれた。

あたしの事は、いつも頭に残ってはいたけれど、ゲオルグに対するリスペクトと愛情は押さえきれなくなったと言う。

それを聞いて、あたしは思った。

もう、あたしの出番なんてない。
玲子は、いちばん大切なものを手に入れたのだ。

「玲子、おめでとう。幸せになってね」

あたしは言った。

それ以上、何の言葉もなかった。

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