
誓いのガーランド
第3章 繋がる輪 2
花実は、じっと彼の目元を見上げて、覗き込む。
「なんですか、宇吹さん……」
彼は、顔色一つ変えずに呟いた。
「いや、今日も寝不足なのかなって思って」
花実が笑いながら言うと、釣られて彼も笑い返した。
「あぁ……まぁ、これね、クマは万年消えないよ。男に涙袋があっても仕方ないですね」
彼はその目元にある涙袋も相まって、少し疲れたようにそう言った。寝不足なのかどうかは定かではないが、入社したての時より、ほんの少し濃くなった気がする。
来月で入社6年目ともなれば、お互い30代を目前にしているわけだから、少しくらい歳を取ってもおかしくないか……。
花実は何となく、ポケットから飴を取り出し、それを彼に握らせた。
「ありがとうございます」
噛み締めるように彼が言うのがおかしくて、くすくすと笑いながらお手洗いへ急いだ。
花実は、少しだけ自分の気持ちに気づいている。
だけれど、気づかないふりをしていた。
彼を、気にかけたり目で追ったりすることを。一人の同期として以上に、見ている自分がいることを。
