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あの猫……角村の描いた猫のことだった。

どこかで見た。どこだっけ。

花実は熱くなってきた体の熱を、少しばかり逃がすように、浴槽の縁に頬杖をついた。

天井についていた、換気扇をにらむ。
花実が動くことで出ていた水の音が、完全に止まった。

ゆっくりと、付箋に描かれた猫のことを思い出す。
青い付箋の端っこ、整った文字、イメージの中で、猫のイラストを書く彼。


そして、あの猫の独特の表情……

天井から一粒、雨水のように水滴が滴って、
湯船に落ちた。

ーーピタッ……。

その瞬間、水が跳ねる音と同時に、頭の中で点と点が繋がる。
花実のせき止められていた記憶が、勢いよく流れるように溢れ出した。