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イキ狂う敏腕社長秘書

第10章 【溺れていく本能】






「僕の事……アリなのはアリなんですよね?」




「ん………好き」




「期待してても良いですか?選んでもらえるように頑張ります」




いじらしいね。
他に目を向けても良いんだよ。
健全な男の子なのに。




「期待……?」




聞き返すとすぐ不安で揺れる瞳。
チュッと重ねる唇に驚いてる。




「期待……してて」




弄んじゃう私を許してね。
純情な想いをたぶらかせてごめんね。
そっと耳元で囁く意地悪な言葉でキミを縛りつけちゃう。




「その身体……誰にも許しちゃダメだよ」




「は、はい……」




「おやすみ」




「おやすみなさい」




笑顔で見送る私はどこか感情が欠落している。




きっとたくさん不安にさせて
たくさん傷付けちゃうのかな。
身体だけの関係で居たいなんて今のキミには耐えられない言葉でしょう。
心までは要らないって理解してもらえると思えないし。




ただ、帰った後に考えていた。




ベットの上で膝を抱えて座る。




キミは外で、こうして何時間待っていたんだろう。
帰って来た私をどんな気持ちで。




他の男に抱かれてる私を知れば、あの素直な心はどう変わっていくのか。




もう雁字搦めで動けないや。
どこかに置いてきた感情を探しに戻るにはあまりにも時が経ち過ぎていた。
純粋であればあるほどそれと反比例するように私の心は違う方向に向いてしまう。




「失敗だったかな……」




静かな部屋に浮かんでは消えた小さな声。
そう思うなら手を離せば良かったのに。




会社で会ってもポーカーフェイスの私に悲しい顔しないで。
メッセージも未読スルーしてる。
キミ以外とは笑顔で話す私を見てどう感じたのか。




限界を迎えたら聞かせて。




それまでは私からは与えない。




だから怒り狂って来て。




キミの本性見てから今後の事は決めるね。




逃げるなら今だよ。




キミならもっと真面目な道に戻れるよ。




いつか思い出になった時言ってよ。




“史上最悪で最低な女が初めての相手だった”って。
それくらいキミに残ると良いな。




残せてると良いな。



















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