テキストサイズ

龍と鳳

第3章 ぽよぽよの大冒険

お前名前あんのか?

想念を使って問いかけると、子供の声で返答がある。

「サク=ライ・ショー」

さくらいしょう?
のりちゃんじゃないの?

オイラが尋ねると、ぽよぽよは否定した後でフンッと小馬鹿にしたように嗤った。

「ちがう、っていうか誰それ?」

隣山の龍だよ。
オイラの同級生。

「知らねーって
てゆうか、アンタこそ二形か?
本性が大き過ぎて
人形とれないんじゃないの」

ニヤッと得意げに笑って言う。

二形を持つ存在は、その本性が大きければ大きいほど、人形を取るのが難しい。
だが繁殖をするためには、どうしても人形になる必要がある。
人形を取れるかどうかは、オイラ達みたいな二形の存在には結構重要なポイントだった。

それにしても、いくら星の神様の御使いだからって、ずいぶんな態度だなぁ。
ちんこ隠しながら何言ってんだ。
もしここに稲荷神が居たら、山の神に対して不敬だって怒って大変だぞ。

まぁ、必死に虚勢を張って生意気を言ってるのが分かったし、オイラは別に腹も立たないけどね。

こんな生まれたばかりの和毛(にこげ)に馬鹿にされたって、悪いけど屁でもない。
オイラこう見えて300歳過ぎてるし。

そもそも龍ってやつは、あんまり感情が激しくないんだよ。
ぼーっとしてて動じない、マイペースで気まぐれな存在、ってよく言われる。

ん~……。
なんか人形になって見せろ、って雰囲気だけど。
オイラもう少し泳いでいたいし、めんどくさいなぁ。

そう思ってたら、神様からお声がかかった。

『じゃぁ、智
そういう事だから、後は頼んだぞ』

はっ?

『儂(わし)はな、ほれ、そうそう
月山へ行かねばならんのじゃった
そうだそうだ、思い出したわ
御使い殿はお前が相手をしてやりなさい
ああ忙しい忙しい
ではな』

神様はそう早口に言って、気配を消してしまわれた。

え、なんで?
オイラどうすれば良いのかわかんないんだけど?
もしかして押し付けられた?

ええええええええええええっっっ。

ぽよぽよは上目遣いでオイラを見上げてる。

「オレが名乗ったんだからアンタも名乗れよ
挨拶は大事なんだぞ」

口を尖らせて言ったかと思ったら、急に瞳をキラキラさせて嬉しそうに笑った。

「オレ龍って初めて見た
かっけぇ~~」

えー、これの相手をオイラがするわけ?
めんどくさいぃ。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ