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龍と鳳

第5章 はじめてのチュウ

一緒に火をつけて、二人並んでしゃがんで。
儚げに小さくはじけては消える火を眺めた。

生まれたばかりの火のエレメンツみたいだ。
人工の火なのに、とってもいじらしい。
じっと見ていると、中心に集まった塊がやがて小さくなって。予想もしないタイミングで、ポタリと落下する。

「おもしろいね!」

「そうか?」

智が笑ってる顔が花火のささやかな火で照らされて、オレはこの龍がとっても綺麗であることに気がついた。
さっきはあんなに恐ろしかったのに。

急に恥ずかしくなってきて、智から目を逸らす。
誤魔化すために、バケツを挟んで向かい側に居るベガ様とアルタイル様的な二人を見た。
その時、二人の花火も消えて。
一瞬暗くなって。

そうしたら、二人の顔が近づいて唇が重なったのが見えた。
間もなく離れて、二人は嬉しそうに笑いながら、お互いを見つめてる。

「おい、じろじろ見るなよ」

智が小声でオレに言うから。

「だってオレらは夜目が効くじゃん
見えちゃうんだから仕方ないだろ」

オレも小声でゴニョゴニョと言い返して。
ふと、オレも、あれ、やってみたいなと思った。

ベガ様とアルタイル様がしてるのも、実は見たことがある。
でも、オレ、あっちに居た時は人形を取れなかったから、自分でしたことってないんだ。

「智」

「ん~?」

新しい花火を取り出そうと、袋をガサゴソ漁ってる智の顔を両手で挟んで、こっちを向かせた。

せーのっ、んっ。

「んんっ!?」

智は体をビクッと震わせて、それから尻もちをついた。
取りあえず吸ってみたけど、どうすればいいんだろう?

あ、もうダメだ。

息が苦しくなって口を離したら、ちゅっ、って音がした。
智がオレを見て呆然としてる。

さっきの二人みたいに、じーっと見つめ合ってたら、始まるみたいよ~、って、一緒にいた人の中から声が上がった。

ドンッ、ドドンッ。

腹の底に響くような音が、海の方から聞こえる。

パンッ、パパパパパッ。

ドドンッ。

智の瞳に、綺麗な色の光の華が写ってた。

「や~まや~」

誰かが楽しそうに叫ぶのが聞こえた。


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