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龍と鳳

第7章 【鳳凰編】春、お山にて

お山の春は遅い。

下界がGWと騒ぎ出す頃になってもまだ吹雪くことがあるくらいで、夏至が来るまでの間は、毎朝、布団から出るのがためらわれる。

もっともお社の奥は次元が違うから、外で寝るわけじゃないし。神様の懐でまどろむ様なものだけども。

それにしても、春ってのは毛布の柔らかな感触が心地良くて…あったかい人肌も気持ちいいし…。
つるつる、すべすべ、だなぁ…。

「ん…智…おはよう…」

寝呆けたままで手を動かすと、腕に抱えたつるすべから声がする。

「…はよ…」

深く考えずに目を閉じたままで返事をしたら、抱きついてくる感触があった。

「今日も大好き…早くタマゴつくろうね…」

…タマゴ?
タマゴ、ってなんだ?

「オレ、頑張ってタマゴ産むからね…」

むふふっ、と笑う気配があって、胸に濡れた柔らかいものが触れた。先端でチロチロと動く。

「んぁ…」

「智、かわいい…」

きゅうぅ、と吸い上げられて声が出た。

「あ、ん…」

「今日こそ交尾しようね」

声と同時に股の間に手が伸びてきて、するっと撫でられる。

こうび?
タマゴ?

こうび、コウビ……交尾かっ!?

がばりと起き上がると、剥いだ布団の下で寝ぐせ頭の翔がオイラを見てにっこりと笑った。

「ぎいやぁ~~~~!!!」

オイラが悲鳴を上げたのは言うまでもない。



昨年の夏からお山で預かっている鳳雛(ほうすう)の翔は、やってきた時は産毛のぽよぽよだったくせに、今では羽根の色がすっかり赤く変わった。

オイラの口を吸うと成長するんだ、って言って、散々寝込みを襲われた結果なんだけど(なんだ、その理屈?)。

翔いわく頑張った甲斐があったそうで、近頃では人形(ひとがた)をとると辛うじて人間の中学生ぐらい?には見える。

本人は得意になって、もうアソコに毛がいっぱい生えたから大人だ、って主張してるけど、背も小さいし、どう見たってまだ子供だ。



それがさぁ…。
最近は交尾させろ、ってうるさくて…。

まだ発情期には早いはずなんだけど、どうなってんだ?
突然変異か?
世俗と離れ、秋から春までは閉ざされるお山に在って、どうやって繁殖についての知識を得たのか、不思議で仕方ない。

本能なんかな?


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