
メランコリック・ウォール
第43章 灼熱
「どれもこれも安すぎてびっくり。天国だぁ!」
「ふふっ。アキが気に入って良かった」
私は何枚もキャミソールやTシャツを買い、ビーチサンダルやサングラス、小物、なんでも惜しみなく買った。
「俺出すのに。」
「いいの!今までお金使うことなかったから…楽しい!」
…とはいえ、この旅の飛行機代もホテル代も、夕食代も、すべてキョウちゃんがもってくれている。
なんだか忍びないが、私の気持ちとは裏腹に彼は毎日幸せそうに笑った。
灼熱の太陽に照らされるその姿に、何度でも鼓動が早まった。
翌日の午前中、ヴィラに併設されているスパでエステを受けた。
その間キョウちゃんはプールで泳いでいて、エステが終わって合流すると第一声に「腹減った!」と声を上げた。
「だれもいなくてさ、貸し切り。めちゃくちゃ泳いじゃった(笑)」
「ふふっ。そりゃあ、お腹減るわけだね」
日本食のお店に向かいながら、
「味噌汁とかあんのかな(笑)」
「焼き鮭とか?」
なんて話していた。
いざ入ったお店のメニューには、中華料理の名前がずらりと並んでいて笑い合った。
「日本食かどうかは置いといて、案外うまかったな。」
「うんうん。結構本格的な味がした!」
…4日目ともなると、なんだか少し不安になってくる。
仕事もせずに、ふらふら遊んでいて良いのだろうかという気持ちが脳裏によぎる。
「なんだか変な感じ…」
「ん?」
いったん部屋に戻り、ベッドでキョウちゃんの胸にうずまりながら言った。
「ううん。…」
「どんな?」
「こんな事してて良いのかな…って…」
「不安になっちゃった?」
キョウちゃんはどこか意地悪な笑みで私の髪を撫でる。
「だって、こんなに長く仕事休んだこと無いし…」
「良いんだよ。今まで休みなく働いてきた分、ごほうび。お互いにな。」
「うん…。そうだよね。」
