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仔犬のすてっぷ

第16章 潜入!ボーイズ・バー


「さて。とっつあん坊やはともかく……」
「・・・だれがとっつあん坊やだ……あ゛オーナー……」

 歩美さんにばふっ☆と虫あみを被せられ、石になってしまった蒼空を尻目に、彼女は僕をまじまじと見る。


「やっぱり私の見立てに狂いは無いわね♪
すっかりロラ○になって、素敵よ?優ちゃん♡」

 僕としては、少しまだ恥ずかしかったけど…褒められて悪い気はしなかった。


「今日のトコロはその姿に慣れるのと、皆の仕事振りを見て勉強してね☆
できそうな事をするくらいでいいから」

・・・できそうな事をする……。
実はとても簡単な指示なんだけど、一番難しい事なのを僕は知っている。

 できそうだから、と思って出張り過ぎるとやり過ぎて失敗するし、何も出来ないからと、見ているだけでは仕事が出来ない奴のレッテルが貼られてしまう。
 これでうちのパチンコ屋に入って来てすぐ辞めさせられた人間が沢山いる。

 森川店長の、たった1言。


「ダスト」

それで、全てが終わる。

僕が知っているだけで8人いた。
うち、大卒5名…彼らは何が悪かったのか……どころか、自分がどうしてゴミ扱いされたのかさえ解っていない。
 辞めさせられた面々はみな


「たかがパチンコ屋の店員」

そんな言葉をどこかで放っている事が多い。

«たかが» なんて思っている時点でこの仕事を馬鹿にしているわけだから、辞めさせられるのは当たり前だ。

何事にも前向きに取り組む姿勢が大事なんだと、少なくとも僕はそう思っている。


「・・・できそうな事をする……分かりました」

「あ、優ちゃんはどっちかって言えば、お客様なんだから、なんなら今日は蒼空にくっついて甘えていて良いからね♡♡」

ぱちん☆とウインクをした歩美さんは、扇子を口元に当ててムフフッ★と笑った。





歩美さん・・・僕の決意。
返して下さい・・・・・・(泣)



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